雲の彫刻は、用と美の集大成
屋根を支える軒下の部材に雲の彫刻がほどこされているのを見たことがあるでしょう。あの雲の彫刻は、屋根が長く出ている飛騨高山の伝統的な日本家屋にはほとんど入れられており、屋根を支えるという実用性に装飾性をもたらしました。おそらく飛騨高山の家屋のいちばんの特徴と言えるのではないでしょうか。もともとは社寺で用いられた技術でしたが、大旦那の家を新築する時などに徐々に使われるようになり、今では一般住宅でも見られる彫物です。昔のスケッチ帖を参考にしながら、今も昔も、大工がフリーハンドで物件ごとにスケッチし、型を制作しています。雲のほかに、唐草や波などの模様があり、実用性と装飾性がきちんとバランスがとれるように作られています。この用と美の両方を持ち合わせた代表的な技術は現代の住宅に取り入れることができますが、今の視点で眺めてみると、それは古い技術というよりも、日本的なモダニズムと映るのではないでしょうか。